エンジンオイルは調べれば調べるほど沼にハマっていきます。
サーキットを走るなら、高いオイルも選択肢に入ってきて自由です。
しかし、街中をメインにちょっと遠出でツーリングする程度の使い方で何を選べば良いのでしょうか?
結論、我々素人がオイルメーカーがひた隠しにする成分を、化学的に分析、理解し選ぶことはムリ!なので、
①オイルの認証に任せる
②油温を把握し、粘度を決める
という方針のもと、ツム流オイル選定方法を紹介したいと思います。
潤滑の基礎知識はこの動画を見よ
早速人任せですが、私が見た中でこの動画が一番、潤滑の基礎についてわかりやすく説明しています。
オリラジの中田敦彦さん形式の動画で必要な紹介がばっちりなされています。
グループⅢ基油から選ぶといい
とにかく、エンジンオイルは種類がいっぱいありますので、絞り込む必要があります。
コスパを語る上では相場の把握が非常に重要です。何Lで買うかによって単価が変わりますが、
グループⅢ基油が1,500円/Lだとすると、グループⅣ基油は3,000円/Lが相場
上記の動画を見た方ならグループⅣであるPAOをベースとした配合のオイルが欲しいところです。
しかし、PAOを精製しているのは、エクソンモービルなどの海外企業で大きなプラントで作るしかなく、テキサスやアントワープ(ベルギー)などで作っており、日本はそれを輸入する形です。日本の潤滑油メーカーはそれをベースオイルとして配合して売っているというわけです。コスト的には当然高価になります。
かといって並行輸入となると選択肢も少なくなります。
モービル1FSとかリキモリシンスオイルハイテックとかは比較的入手しやすいかもしれませんが、まあ高価です。
なのでグループⅢから選ぶのがオススメです。
API規格はSNかSP
エンジンオイルの5つの役割、潤滑、清浄、防錆、冷却、密封で添加剤の寄与が大きい清浄分散性などは、正直素人で区別はつかないです。API規格はその指標となります。
これを取得するのはそれなりにお金がかかるので敢えて取っていないというメーカーもあり、取ってないものが一概にダメとは言いませんが、我々の判断からは外した方が良さそうです。
特に直噴ターボエンジンには、推奨がSNグレードであってもSPグレードを入れよう!
LSPIという、渋滞などのエンジンが低回転高負荷時にエンジンがダメージを受ける問題があり、トヨタ自動車が見つけた原因としてはオイルに含まれたカルシウムだったらしく、対策としてカルシウムの含有量を極端に減らし、ほかの添加剤(マグネシウムだったかな?)を増やしたSN+という独自グレートを2018年頃に販売していました。
それがAPIの規格に組み込まれたのがSPグレードです。最近の話ですね。
2018年以前の直噴ターボ車はSNグレート指定になっているかもしれませんが、SPグレードにした方が賢明です。
SNグレードとSPグレードは、エンジンオイルの品質を示すAPI(米国石油協会)規格の一部で、エンジン保護や燃費性能、環境負荷に関して異なる性能を持っています。SPはSNの次世代規格であり、エンジンに対する保護性能がさらに強化されています。
1. SNグレード
- 導入時期: 2010年
- 目的: 高温でのデポジット(堆積物)防止、ターボチャージャーの保護、スラッジの抑制、低温での汚れ防止、耐摩耗性の向上。
- 適用車両: ガソリンエンジン車(特に2010年以降の車両向け)。
- 特長:
- ターボチャージャー搭載車に対する保護。
- エンジン内部のスラッジ(汚れ)の発生を抑える。
- バイオ燃料(E85)使用時の保護機能も強化。
2. SPグレード
- 導入時期: 2020年
- 目的: SN規格をさらに改善し、特に**LSPI(低速・早期点火)**に対する保護を強化。直噴ターボエンジンでの問題に対処し、燃費性能を向上させるとともに、エンジンの長寿命化を目指す。
- 適用車両: 直噴ガソリンエンジン(GDI)、ターボチャージャーエンジンを含む、最新のガソリンエンジン車両。
- 特長:
- LSPI(低速・早期点火)防止: 直噴ターボエンジンで発生しやすいLSPIに対応し、エンジン損傷を防ぐ。
- チェーン摩耗保護の強化: タイミングチェーンの摩耗を抑制し、エンジンの寿命を延ばす。
- オイルの酸化安定性: 高温での安定性が向上し、長期間使用してもオイルの劣化が抑えられる。
- 燃費向上: 摩擦低減により燃費が改善されるように設計されている。
SNとSPの主な違い
- LSPI(低速・早期点火)に対する保護: SPグレードでは、特に直噴ターボエンジンにおけるLSPI問題に対応するため、オイルの配合が最適化されています。SNグレードではこの保護が弱かったため、SP規格で大きく改善されています。
- チェーン摩耗保護: SPはエンジンのタイミングチェーンの摩耗を抑制する性能が追加され、エンジン寿命の延長に寄与します。
- 燃費性能: SPは摩擦をさらに低減させ、燃費性能が強化されています。
- エンジン保護全般: SPグレードでは、エンジンの全体的な保護性能が向上しており、長期間にわたってエンジンの性能を維持します。
まとめ
- SNグレードは、従来のガソリンエンジンに対して十分な保護を提供しますが、最新の直噴ターボエンジンに特化した保護機能は不足しています。
- SPグレードは、SNグレードの改良版で、特に直噴ターボエンジンでのLSPI防止やタイミングチェーンの摩耗低減に優れた性能を発揮し、最新のエンジン技術に対応しています。
油温を知り、むやみに番手を上げるべからず
基本的にエンジンオイルの使用環境は100℃~130℃が望ましいです。
空気中の湿気からの水分やガソリンの希釈を防ぐ為、100℃以上にしたいですし、130℃を超えるといけないのは動画の通りです。
粘度を上げた方が良いっていうのはちょっと違う
「10万キロぐらい走ってエンジンがヘタってきたら、粘度番手を30から40に上げた方が良い」とかよく聞きますが、それはないです。
- 各部が摩耗しているから油膜を厚くして隙間を埋めた方がいいのでは?
-
80年代以前の車両であれば、そんなに精度詰めていないですし、オイル流路も確保されているので、そういったこともあるでしょう。
しかし、通常そこまでクリアランスが広がればオーバーホールして部品交換がセオリーです。
最近は特に低粘度オイルの使用を前提として設計しているのでオイル流路が細く、粘度を上げるとヘッドにオイルが溜まりやすいです。
ブローバイガスの原因ですし、オイルパンに戻って冷却される時間にも影響しますので、粘度上げるデメリットは大きいです。
エンジンオイルはいつ減ってる?
普通エンジンオイルは燃焼室にちょっと混じるので減るものです。
しかし、オイル漏れをしておらず異常に減るなら、バルブから燃焼室へのオイル下がりか、ピストンから燃焼室へのオイル上がりを疑います。摩耗により隙間から混入するエンジンオイルの量が増えたから起こる現象ですね。
これの対策として、粘度を上げるという人がいますが、それはもう少し慎重にした方が良いです。
デメリットは先ほどと同じですが、そもそもいつ燃えているのかは気にした方が良いです。
高速道路走行などで高回転高負荷で燃えているなら、粘度を上げると応急処置になるかもしれませんが、あくまで応急処置でピストンリングやバルブ摺合せが必要です。
しかも、低回転低負荷で燃えてるなら粘度関係ありません。
私はシルビアやスイフトスポーツを街中でちょっとした買い物にも普通に乗っていましたが、夏じゃないと100℃まで上がりません。日本精機の油温計でオイルフィルターとのサンドイッチブロックで計測していたので、確かです。
そんな場合は、暖機運転をしっかりする方が効果的です。
エンジンが暖まっていない状態だと、水分がいつまでも抜けず、ガソリン希釈も進みます。
ドライスタートでのダメージを軽減する為、少なくとも水温のランプが消えるまでは低負荷で暖機しましょう。
またSAEグレートは100℃での動粘度をうたった物です。
例えばマルチグレードの場合5w-30の推奨を5w-40にあげても、エンジンの温度が暖気前の40℃ぐらいでオイルが燃えているなら、いくら高温側動粘度を上げても意味はないです。
それなら低温側を上げて10w-30の方が理にかなっていますよね。
5wとか0wにする意味は本当はない。40℃動粘度で判断せよ
マルチグレードの5w-30とかの前半5wとかは、実はエンジンオイルがどれだけ凍らないかを示しています。
低温時でもオイルが流動しやすい方が、エンジンの始動が容易だからです。
例えば
「5W」は、低温(冬季)でのオイルの流動性を示し、-30℃程度でも適切に流動します。
「0W」は、非常に寒冷な環境(-35℃程度)でもオイルが柔軟に流動し、エンジンを保護できることを示します。
つまり、日本で暮らす上ではほとんど必要のない性能と言えます。
実際にドライスタート時のオイルの油膜による保護性能を期待するなら40℃の動粘度を見た方が現実的です。
5wの方がサラサラと思っていたが、実は10wの方が40℃動粘度低かったという事は多々あります。
尖った性能のオイルは要注意
GR Touring 5W-40
これは同じ5w-40のオイル群の中でダントツで40℃動粘度が低いです。
100℃動粘度は他メーカーが13~14mm²/sが多い中、15.0mm²/sと高め。
40℃動粘度は他メーカーが72~85mm²/sが多い中、54.6mm²/sとダントツで低め。
40℃動粘度はアクセルレスポンスに直結します。すごくGRらしくて良いですよね。
とんでもないオイルですが、気になるのはドライスタート。
例えば、オイルの切れやすい水平対向なんかで、2週間ぐらい空いてエンジンスタートする時はどうでしょうね?
もちろん粘度低い分添加剤モリモリなのでしょうが、
どちらかというと普通のレシプロで2,3日に一回、土日に絶対乗る、一度乗ると長距離。という人向けな印象です。
自分のライフスタイルに合わせて選んだ方が良いという事。
AZ CER-001/RACING
気になるお値段が、20Lで24,981円。グループⅣ基油でこれは異常に安い。
私の感覚としてはモービル、INEOS、シェブロンなどのPAO製品ではなく、NacoPolymers(上海)や東南アジア系メーカーなどの輸入製品を日本で配合しているのではないかと予想しています。
ヨーロッパ系自動車メーカーの認証取ってないからとか、流通経費が安いとか色々ありそうですが、結局オイル系はカルテルとまではいかないですが、トヨタなんかの圧倒的物量がなければ、おおよそ値段相応でちょっと割安割高の違いがある程度です。
上記のメーカーが悪いとは言いません。試してみて同価格帯のオイルより良いかもしれませんが、バラツキも大きいかもしれませんし、まだ一般的でなく分からないというところです。
コスパでコストの比重が大きいものはそれだけ冒険もあるという事かと。
最後は応援したいメーカーから選ぶ
メルセデスベンツに乗ってる方なら、MB229.52認証がいいだとか、から選んでも良いですし、往年のカストロールが好きなんだという方ならそのメーカーから選ぶのも良いでしょう。
大切なのはコストパフォーマンスから選ぶなら、
- バランスの良いグループⅢ基油
- 直噴ターボに気を付けてSPグレードを
- 指定粘度から大はずししない
- 飛び出た性能の物を選ぶなら自分の用途に合っているか注意
- 上記ならどれ選んでも値段相応
参考になれば幸いです。
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